●夫婦の間に子がない場合
子がない夫婦の一方の配偶者が亡くなると、残された配偶者が全財産を相続できると思っている方が多くいらっしゃいます。しかし、亡き配偶者の親あるいは兄弟姉妹も相続人となります。配偶者が亡くなり遺言書がなかった場合、残された配偶者は「義理の親」あるいは「義理の兄弟姉妹」と遺産分割協議をすることになります。更に、義理の兄弟姉妹が亡くなっていた場合はその子(甥姪)とも遺産分割協議をすることになります。
これに対して、夫が「全財産を妻に相続させる」という遺言をしておけば、このような遺産分割協議をする必要がなくなります。
●前妻との間に子がいる場合
前妻との間に子があるが疎遠になっているという場合でも、その子は相続人となります。そして、前妻との子も現在の妻との子も同じ「子」ですので、相続分の割合は同じです。遺言がない場合、残された現在の妻と子が面識のない前妻との子と遺産分割協議をすることになります。
遺言でこれまでの経緯なども踏まえてきちんと財産分けをしておけば、このような事態を避けることができます。
●相続人以外の人(亡き子の配偶者(嫁)、内縁の妻、面倒を見てくれた人やお世話になった人など)に財産を分けてあげたいとき
長男が亡くなった後も、お嫁さんが亡夫の親と同居を続け世話をしている場合があると思います。亡夫の兄弟姉妹が遠方に住んでいて、親の世話はお嫁さん頼み、全く世話をしていないケースも多々あります。このような場合に亡夫の親が遺言がなく亡くなると亡夫の兄弟姉妹が遺産を全て相続し、相続人でないお嫁さんは何ももらえないことになります(相続人に対して特別寄与料の請求はできますが…)。亡夫の親が遺言をしておけば、お嫁さんにも財産を分けることができます。
●相続人同士が不仲なとき
相続が”争続”になることは決して珍しいことではなく、またお金持ちだけの話でもありません。
現代社会では各人の権利意識も高く、価値観も多様化しています。更にはこの日本でも貧富の差が広がりつつあり、相続トラブルの多くは普通の家庭で起きています。司法統計によれば、2020年におこった相続トラブルのうち、遺産額が1,000万円以下が約35%、1,000万超え5,000万円以下が約43%と、トラブルになる約80%は遺産額が5,000万円以下の家庭で起こっているのです。
ご自身の遺志とともに遺言を残しておくことで、相続トラブルを防ぐことができる可能性があります。
●相続人が全くいない場合
この場合、特別な事情がなければ遺産は国庫に帰属することとなります。遺言を残すことで、お世話になった方に遺産を分けたり公益法人や自分の応援する団体に寄付することが可能となります。